PCV 内部調査から得られている情報

これまでのPCV 内部調査の状況を以下にまとめる。

(1) 1 号機PCV 内部調査

  1. 目的:1号機について、PCV 貫通部(X-100B ペネ)より調査装置を投入し、「PCV 内の1階グレーチング上」の情報を取得する。
  2. 方法: 2012 年10 月にCCD カメラによるPCV 内部調査と滞留水採取を、2015 年4 月に形状変形ロボットを用いたペデスタル外側調査(B1 調査)を実施した。
  3. 得られた情報:以下に示す情報を得た。図1に調査結果の一部を示す。
    1. ① 既設設備(PLR ポンプ、 PCV 内壁面、HVH など)の大きな損傷は確認されなかった。
    2. ② 線量率は10Sv/h 程度である。
    3. ③ PLR 配管遮へい体が落下していることを確認した。
    4. ④ D/W 底部へのアクセスルートが確認されたが、D/W 底部には堆積物が広く分布している。
    上記④の情報より今後の調査や燃料デブリ取り出し時における堆積物対策が必要なことが分かったため、PCV 内底部ペデスタル外側の調査(B2 調査)は、調査要領の見直しを検討し、2016年度に延期した。なお、今回の調査では燃料デブリは見られなかった。



    図1  PCV 内ペデスタル外側調査(B1 調査)結果(1 号機)


  4. 考察:PLR 配管遮へい体(鉛毛マット)が落下していることから、1 階グレーチング部では鉛の融点328℃を超える温度になった可能性があることが推定できる。
  5. 課題:左回りの調査時にPLR ポンプと空調ユニットの間の場所でグレーチングの隙間に調査ロボットのクローラーがはまり込みスタックが生じたことから、ロボットのクローラー部を確認しながらの前進後退を行う必要がある。

(2) 2 号機PCV 内部調査

  1. 目的:2 号機について、内部調査ロボットを用いてプラットフォーム上の落下物、損傷の有無の確認及び原子炉格納容器底部付近へのアクセスルートの状態を確認する。
  2. 方法:2012 年3 月及び2013 年8 月にPCV 貫通部(X-53 ペネ)を通して、線量率測定、CCDカメラによるPCV 内部調査、滞留水採取を行った。2015 年8 月にX-6 ペネを通しての内部調査ロボットによる調査を計画していた。
  3. 得られた情報:以下に示す情報を得た。図2に調査の準備状況の一部を示す。
    1. ① 線量率は場所によって異なり、2012 年3 月に31~73Sv/h を、2013 年8 月に24~36Sv/h を測定した。
    2. ② PCV 内ペデスタル内側調査(A2 調査)を計画していたが、CRD ハッチ(X-6 ペネ)周辺に溶出物が確認され、近傍の線量率が想定を大幅に超えていたことから線量低減対策を実施するために調査の実施を2016 年度に延期した。
  4. 課題:X-6 ペネは損傷を想定していなかったことから、周辺の類似箇所を含め、今後PCV 補修対象範囲の再検討が必要である。また、今回X-6 ペネ周りの現場において除染に複数の手法を試み、除染による線量低減の困難さの知見を得たことを踏まえ、今後各所の除染、線量低減を効果的に行うための検討に反映することが必要である。



図2  PCV 内部調査準備状況(2 号機)


(3) 3 号機PCV 内部調査

  1. 目的:3 号機について、PCV 貫通部(X-53 ペネ)より調査装置(カメラ、温度計、線量計)を挿入し、PCV 内の冷却状態の確認を主体とした調査を行うと共に、今後の調査方法の検討に資する情報を取得する。
  2. 方法:2015 年10 月に線量率測定、CCD カメラによるPCV 内部調査、滞留水採取を実施した。
  3. 得られた情報:以下に示す情報を得た。図3に調査結果の一部を示す。
    1. ① PCV 内の構造物・壁面に、確認した範囲では損傷は確認されなかった。
    2. ② X-6 ペネ、CRD レールに、確認した範囲では損傷は確認されなかった。
    3. ③ CRD レール、1階グレーチング上に堆積物が確認された。(PCV 内水中の透明度は良好で あった。)
    4. ④ PCV 内の水位は、OP:約11800 であり、推定値とおおむね一致していた。
    5. ⑤ PCV 内部の温度は気相部で約26~27℃、水中で約33~35℃であった。
    6. ⑥ PCV 内気相部の線量は、最大で約1Sv/h であった。
    7. ⑦ PCV 内滞留水の水質結果から、PCV は厳しい腐食環境ではなく腐食性は低い状態である。現在、PCV 内ペデスタル内側調査として、X-53 ペネから水中遊泳装置等を投入して内部調査を行うことを検討している。
    現在、PCV 内ペデスタル内側調査として、X-53 ペネから水中遊泳装置等を投入して内部調査を行うことを検討している。
  4. 考察:PCV 内部の放射線量が1~3 号機の中で最も低く、滞留水位が高いことによる遮へいの影響と考えられる。
  5. 教訓:滞留水位が高いことから、PCV 内部調査においては、水位調整あるいは防水性を有する機器を用いる必要がある。



図3 PCV 内部調査(予備調査)結果(3 号機)


(4) 滞留水サンプル採取結果

図4にPCV内部調査の際に採取した滞留水サンプル中のCs-137 濃度分析の結果を示す。採取した号機と採取時期が異なるために、特定の号機についての傾向は推定しにくい状況である。しかしながら、セシウム・ストロンチウム吸着装置により処理した水を冷却水としてPCV に注入していることから、全体的にはCs-137 濃度の低下傾向がうかがえる。図5にタービン建屋、プロセス建屋及び高温焼却炉建屋からの滞留水サンプル中のCs-137 濃度分析の結果を示す。タービン建屋での貫通部の存在、近隣施設からの排水接続の影響があるものの、1 号機、2 号機及び4 号機のタービン建屋の滞留水は徐々に濃度が低下している。また、1 号機、2 号機及び3 号機の滞留水のCs-137 濃度においては、PCV 内部<トーラス室となる傾向が共通している。事故時には各号機ともSR 弁が作動し、炉内の揮発性FP をS/C 内の冷却水に導入していること、さらに1号機と3 号機ではベント前にも揮発性FP をS/C 内の冷却水に導入していることから、S/C 内の滞留水は未測定であるものの、Cs-137 はS/C から放出されていると考えられる。



図4 採取したサンプル水中のCs-137 濃度

たまり水中の137Cs濃度 循環注水系統図における溜まり水中の137Cs濃度
図5 タービン建屋内から採取したサンプル水中のCs-137 濃度及び注水系統図