プラントパラメータのトレンドからの燃料デブリ位置の推定

事故後のRPV 周囲の温度、S/C 水温、給水(以下「FDW」という。)系及び炉心スプレイ(以下「CS」という。)系の注水量等のトレンドからRPV 内の熱源(燃料デブリ)の有無について評価した。図1にFDW 系とCS 系の流路の違いを記す。FDW 系は、BWR の通常運転時に復水器で冷却された冷却水がRPV 内へ導入される系統である。RPV に入った後は、炉心シュラウドとRPV に挟まれた空間(アニュラス部)に蓄積され、ジェットポンプのミキサ上部まで水位が上昇したところでジェットポンプ内に流れ込むことになる。RPV 底部が健全であれば、流れ込んだ冷却水がRPV 内に溜まり水位が上昇するが、水位上昇が認められないことからRPV 底部が損傷しており、損傷箇所からペデスタル内側に流れ落ちていると推定される。すなわち、事故後のFDW 系注水では、RPV 底部は冷却できても、BWR の炉心部分を冷却できないことを意味している。それに対し、CS 系は冷却材喪失事故時の炉心スプレイ系であり、炉心直上の炉心シュラウド内壁に沿って設置されている。CS 系注水では、炉心からRPV 底部までの空間を冷却水が流れ落ちて、当該空間の冷却が可能である。これらを踏まえて、号機ごとに燃料デブリの位置を推定した。


図1 FDW 系とCS 系の流路

プラントパラメータのトレンドからの号機ごとの燃料デブリ分布の推定結果を以下にまとめる。

a. 1 号機の評価結果

図2に1 号機のPCV 内部の各位置の温度、注水量の推移及び測定位置を示す。注水量の変化に対応する温度の変化のうち、特徴的なものを以下に示す。

  1. ① RPV 周辺の温度低下が、2 号機、3 号機に比べて早く、事故後約5 か月で100℃未満に低下した。
  2. ② FDW 系の注水量の低下に対応するRPV 周辺の温度の上昇が鈍かった。
  3. ③ FDW 系の注水量の増加に伴い、RPV 周辺温度が50℃未満まで低下し、S/C 水温が上昇した。
  4. ④ FDW 系の注水量の低下に伴い、RPV 周辺温度が上昇した。

上記の①、②、③から、RPV 内に熱源が少ない可能性が高いと推定される。また、③と④からFDW 系の注水の流路上に熱源が存在する可能性があり、注水操作に対応して除熱された熱量がS/C へ移動していると推定される。


図2 1 号機プラントパラメータの推移及び測定位置

b. 2 号機の評価結果

図3に2 号機のPCV 内部の各位置の温度、注水量の推移及び測定位置を示す。注水量の変化に対応する温度の変化のうち、特徴的なものを以下に示す。

  1. ① RPV 周辺の温度が、1 号機に比べて高く、事故後6 月を経過しても100℃以上あった。
  2. ② FDW 系の注水量の低下に敏感に対応したのはRPV 下部ヘッドの温度であった。
  3. ③ CS 系の注水量の開始に伴い、RPV 周辺の温度が低下し、S/C 水温が上昇した。
  4. ④ CS 系の注水量の減少に伴い、RPV 周辺温度が上昇した。この時の上昇幅が大きいのはRPV下部ヘッドであった。
  5. ⑤ CS 系の注水量の増加に伴い、RPV 周辺温度が低下した。

上記の①、③、④、⑤から、RPV 内に熱源がある程度存在している可能性があると推定され、②より熱源までの距離は給水ノズルN4B よりもRPV 下部ヘッドの方が近いことが推定された。また、③より除熱された熱はS/C へ移行していると考えられる。


図3 2 号機プラントパラメータの推移及び測定位置

c. 3 号機の評価結果

RPV 周辺の温度が1 号機に比べて高く、事故後6 か月経過しても100℃以上あったことなどから、2 号機と同様に「一定割合の燃料デブリがRPV とPCV の両方に存在する」と推定された。以下に、この推定の手順をまとめる。

  1. ① RPV 周辺の温度が1 号機に比べて高く、事故後6 月を経過しても100℃以上あった。
  2. ② FDW 系の注水量が最も多いにもかかわらず、RPV 周辺の温度の低下が鈍かった。
  3. ③ CS 系の注水の開始に伴ってRPV 周辺温度が急速に低下した。
  4. ④ CS 系の注水を減少させると、給水ノズルN4B とRPV 下部ヘッドの温度が増加した。

上記の①、③、④からRPV 内に熱源がある程度存在する可能性のあることが推定される。


図4 3 号機プラントパラメータの推移及び測定位置