廃止措置等に向けた進捗状況:敷地内の環境改善等の作業
至近の目標
- 発電所全体からの追加的放出及び事故後に発生した放射性廃棄物(水処理二次廃棄物、ガレキ等)による放射線の影響を低減し、これらによる敷地境界における実効線量1mSv/年未満とする。
- 海洋汚染拡大防止、敷地内の除染
進捗状況のポイント
長期に亘る廃止措置等に向けた作業をやり遂げる上で、作業員の皆さまに意欲を持って働いて頂く環境を整備していくことが重要との認識のもと、作業員に対するアンケートや元請企業との情報共有会合を定期的に実施することにより、現場のニーズを把握しながら継続的に作業環境や労働条件の改善に努める。
(1)敷地境界の線量低減
- 覆土式一時保管施設は、2槽分の準備工事が完了し、ガレキの受け入れ開始。
- 原子炉建屋からの気体廃棄物の放出抑制のため、1~3号機はガス管理システムを設置。
(2)敷地内除染
- 敷地内除染により敷地全体の線量低減を図る。除染の中長期の実施方針を作成し、本方針に沿って除染を実施していく。
(3)海洋汚染拡大防止
- 港湾内海水中の放射性物質濃度低減に向けて、海底土被覆、海水循環型浄化装置の運転を実施し、一定の効果を確認。
- 遮水壁設置工事の本格着工と継続実施。
- 1~4号機及び5、6号機取水路前面エリアの汚染濃度が高い海底土の拡散防止を図るための固化土による被覆工事が完了。
(4)作業安全確保
- 放射線管理
- 車輌用スクリーニング・除染場の本格運用開始。
- APDの不正使用等についての再発防止対策を実施。(抜き打ち検査・胸部分が透明な防護服の導入・APD所持者の識別及び所持確認)
- 作業員の負担軽減に向けノーマスク化・ダストフィルタ化を順次実施。
- 健康管理
- 医療拠点における医療スタッフの確保・配置。
- インフルエンザ、ノロウィルス感染予防・拡大防止対策
- ガン検診対象範囲拡大
- 健康相談窓口の設置
- メンタルヘルス対策
- 安全管理
- 熱中症予防対策の実施
- 就労環境
- 各種相談窓口の設置。
- 協力企業との意見交換実施。
放射性廃棄物管理及び処理・処分に向けた取り組み
(1)放射性廃棄物の適切な管理
- ガレキ撤去工事等に伴い回収したガレキ等は放射線量率や材質によって、また、伐採木は枝葉と幹を可能な限り分別して一時保管エリアに保管。
- セシウム吸着装置(KURION、SARRY)及び除染装置(AREVA)から発生した水処理二次廃棄物である使用済ベッセルと廃スラッジは、それぞれ使用済ベッセル一時保管施設にあるコンクリート製のボックスカルバート内とプロセス主建屋内のピットに保管。
- 使用済保護衣等は、袋詰め又は容器に収納し一時保管しているが、焼却・減容するための雑固体廃棄物焼却設備にかかる事前調査等を開始。
(2)放射性廃棄物処理・処分に向けた研究開発
- 事故後に発生した廃棄物は、破損した燃料に由来した放射性核種が付着していたり、処理・処分の性能に悪影響を与える塩分を多く含む等、従来の廃棄物と異なる特徴があるため、性状把握が必要。
- 水処理二次廃棄物については、滞留水及び処理水試料の分析を実施し、その結果を基に、二次廃棄物に含まれる放射能濃度を評価中。ガレキ・伐採木についても試料を採取し分析を実施中。
- また、事故後の廃棄物の性状把握のために新たに必要となる分析技術の開発についても、並行して実施中。
敷地内除染
- 除染技術の基礎データを取得することを目的に、除染試験(舗装面:集塵システム/ドライアイスブラスト/超高圧水切削等、草地:表土剥ぎ/天地返し)を実施。本試験結果を踏まえ、除染場所に合わせた最適な除染を実施していく。
- また、除染関連技術(GPSサーベイ・除染効果予測計算プログラム(DeConEP))についても適用可能であることを確認。本技術の活用により、除染作業の合理化を進めていく。 ※GPSサーベイ:電離箱式サーベイメーターとパソコンを接続して、位置情報と線量率を記録し、線量率分布を把握する方法。DeConEP:3次元地形からの全放射線量を計算することにより、除染後の線量率を予測するためのプログラム。
- 4号機海水配管トレンチの放水路を乗り越える部分の汚染水の水抜き・充填が2015/12/21に完了。これにより、汚染水があった2~4号機海水配管トレンチ内の約1万トンの汚染水除去が完了した。
- 港湾内の海水中濃度が9月末に告示に定める周辺監視区域外の濃度限度未満となることを目指して海底土被覆、海水循環型浄化装置の運転を実施してきたところ、海水の流れが比較的大きい8箇所については告示濃度(セシウム)未満を達成。
- 社外研究機関等の協力を得て、濃度が下がらない要因の推定、追加対策要否の検討のための追加調査を実施中。
- 大型休憩所の状況
- 作業員の皆さまが休憩する大型休憩所を設置し、2015/5/31より運用を開始しています。
- 大型休憩所には、休憩スペースに加え、事務作業が出来るスペースや集合して作業前の安全確認が実施できるスペースを設けています。
- 大型休憩所内において、2016/3/1にコンビニエンスストアが開店、4/11よりシャワー室が利用可能となりました。作業員の皆さまの利便性向上に向け、引き続き取り組みます。
- 線量低減
- 作業員の滞在時間の長い休憩所・免震重要棟等から優先的に、遮へい等を行うことにより作業員の被ばく低減を実施。引き続き、作業員の被ばく線量への影響が大きい事務本館/免震棟前の休憩所の線量低減工事を優先して実施中(アンケート要望事項)。
舗装面の除染試験に用いた装置
4号機海水配管トレンチ汚染水除去・充填完了
4号機海水配管トレンチ 断面図
港湾内海水中の放射性物質濃度の低減
生活・労働環境の改善
放射線防護装備の適正化
- 福島第一原子力発電所敷地内の環境線量低減対策の進捗を踏まえて、1~4号機建屋周辺等の汚染の高いエリアとそれ以外のエリアを区分し、各区分に応じた防護装備の適正化を行うことにより、作業時の負荷軽 減による安全性と作業性の向上を図ります。
- 2016/3/8より、作業員の負担を考慮し限定的に運用を開始しました。
線量率モニタの設置
- 福島第一構内で働く作業員の方が、現場状況を正確に把握しながら作業できるよう、2015/1/4までに合計86台の線量率モニタを設置。
- これにより、作業する場所の線量率を、その場でリアルタイムに確認可能となった。
- また、免震重要棟および入退域管理棟内の大型ディスプレイで集約して確認可能となった。
就労環境
- 雇用適正化への取組
- 「労働条件等の相談に関する窓口」を設置(H23.5.17)
- 一次下請会社との懇談会を実施(H24.6.25~H24.7.18)
- 元請会社との意見交換会を実施(H24.8.28)
- 作業員の就労実態把握のため「就労実態に関するアンケート」を実施(12/3結果公表)
- 労働環境改善に向けた取組
- 構内専用車両の整備を目的として、構内に車両整備場を設置
車両整備場 外観
- 全般
- 改善状況の検証と改善ニーズの把握のため、「労働環境全般に関するアンケート」年2回実施。
今後の課題・対応の方向
今後も増加する放射性廃棄物の処理・処分に向けた継続的な検討
- 事故後の廃棄物は、従来の原子力発電所からの廃棄物と異なる特徴(核種組成、塩分の含有等)があるため、安全な処理・処分に向けた見通しを得て、将来必要となる制度的枠組みの検討等を行う上では、廃棄物の性状把握・物量評価が当面の課題。
- このため、引き続き、ガレキや水処理二次廃棄物等の性状把握のための核種分析等を行うとともに、分析に当たって課題となる分析対象核種の抽出や妨害核種の除去等について検討を行い、分析技術の確立を図る。
- 安全な処理・処分に向けた見通しの検討に必要な処理・処分概念、安全評価等に関する文献情報の収集・整理を実施するとともに、分析によって得られた廃棄物性状等の成果・情報についてのデータベースの構築を進める。
- 研究開発の実施に当たっては、国内研究機関、国際機関等の協力を得ながら進めていく。
港湾内海水の放射性物質濃度、告示限度未満の達成
- 変動要因の推定、追加対策要否の検討のため地下水や海水濃度等の追加調査を実施し、調査結果に応じて汚染拡大抑制や浄化等の追加対策の検討を12月末までに実施。
- 告示濃度未満の確認のため、対象となる核種の選定等の測定計画を定め、1月末までに測定、評価を実施。
長期的な要員確保・地元雇用への配慮
- 当面は、要員の不足による現場作業への支障は生じない見込み。中長期的には、原子炉建屋コンテナ等の設置や燃料デブリ取出しといった高線量が予想される工事も控えており、継続して安定的に要員を確保するため、引き続き地元雇用に配慮しつつ、専門人材の育成や適切な線量管理を実施。
労働環境改善、就労条件改善に向けた継続的な取組
- 労働環境の改善や、不適切な就労形態や雇用契約の撲滅に向け、継続的かつ徹底的に取り組むとともに、改善状況の検証も実施。