実機調査として、PCV/RPV 内部・S/C 内部・トーラス室等の特定箇所の調査やミュオンを利用した燃料デブリ検知システムによる測定を実施する。ミュオン検知技術は、宇宙線ミュオンは高密度物質が多く存在する部分でよく散乱し、存在しない部分では直進する性質を利用した測定技術である。検出方法により、透過法、散乱法、原子核乾板法等に分類できる。また、PCV 内部調査は、ファイバースコープカメラを用いた観察、滞留汚染水のサンプリング・分析、CCD カメラ、線量計、温度計を積載した無人ロボットによる調査に分類できる。
以下に、これまでの実機調査の調査状況をまとめる。
PCV/RPV 内部調査は、画像・機器の損傷状況、放射線量、温度等のプラントの現状に関する情報を取得することができ、燃料デブリ取り出し方針を検討する上で、有効な手法である。2015年に実施した 1~3 号機のPCV 内部調査、RPV 内部調査の検討状況を示す。
燃料デブリ取り出しに先立ち、RPV 内の燃料デブリや構造物の状況、環境状況を直接確認することは、取り出し作業を合理的に進めるために大変有効である。RPV 内部調査の方法として、これまでの検討において、ノズルに繋がる配管からRPV 内部にアクセスして調査することを検討した結果、適切な位置まで到達し、調査を行う方法は技術難度が高いと判断している。そこで、オペレーションフロア上からウェルシールドプラグ、PCV 上部に開口を設け、RPV 内部にアクセスし、内部調査を行う方法を開発対象に選び、実現性を確認するための開発を実施中である。主要な技術課題として、PCV 上部に開口を設けることに関し、内部からの放射性物質の放出を抑制のためのシール技術の可能性を要素試験で確認した。また、オペレーションフロアレベルからアクセスして炉心位置まで、複雑な内部構造物を貫通してアクセス孔を開ける技術について要素試験を行い、実現の可能性を確認した。さらに、現場でのRPV 内部調査で、必要となるシステムの概念を検討し、調査に係るシステムとして、放射性物質放出防止対策をはじめとして、相当の準備が必要であることを確認した。
今後の課題として、穴開け加工時や調査時のシステム全体に対する要求条件を整理し、具体的な検討を通して実現性の確認を行うと共に、適用する内部調査のための技術についても具体的な検討を進める。今後、RPV 内部調査として合理的な計画改善や、現場状況を考えた各号機での実施時期の具体的検討を進めると共に、システムの規模が大きくなる可能性があることから、技術的な実現性検討と合せ、調査ニーズに関し、調査項目と重要度の検討を深め、調査実施に伴うリスクについても考慮し費用対効果の観点からの判断が必要である。これらを計画的に行い、適切な時期に判断をしながら進めていくことが重要である。
なお、開発を進めるに当たって、他の技術開発内容や国内外の技術情報の調査を継続し、合理的な方法を柔軟に取り入れていくことが望ましい。
ミュオン検知技術を活用した燃料デブリ分布の測定について以下にまとめる。
1 号機については、透過法のミュオン検知による燃料デブリ分布測定を2015 年2 月から5 月までと5 月から9 月までの2 回実施した。これらの測定結果から、元々の炉心位置には透過法のミュオン検知の識別能力である1 m を超える大きさの燃料も水もないと判断される。
2 号機については、原子核乾板による透過法のミュオン検知による燃料デブリ分布測定が実施され、炉心位置には大きな高密度物質(燃料)が無いものと想定されている。
また、透過法による炉心部及び炉底部の測定を2016 年3 月から開始し、3 ヵ月以上のデータ測定を行った後に評価を行う予定である。
3 号機についても測定計画を検討することが必要である。