実機調査による推定に関する検討

目的

  1. 燃料デブリを取り出すための工法、炉内線量状況等を検討するための基礎情報として、燃料デブリの分布及び炉内環境情報を調査する。

本文

実機調査として、PCV/RPV 内部・S/C 内部・トーラス室等の特定箇所の調査やミュオンを利用した燃料デブリ検知システムによる測定を実施する。ミュオン検知技術は、宇宙線ミュオンは高密度物質が多く存在する部分でよく散乱し、存在しない部分では直進する性質を利用した測定技術である。検出方法により、透過法、散乱法、原子核乾板法等に分類できる。また、PCV 内部調査は、ファイバースコープカメラを用いた観察、滞留汚染水のサンプリング・分析、CCD カメラ、線量計、温度計を積載した無人ロボットによる調査に分類できる。

以下に、これまでの実機調査の調査状況をまとめる。

PCV/RPV 内部調査

PCV/RPV 内部調査は、画像・機器の損傷状況、放射線量、温度等のプラントの現状に関する情報を取得することができ、燃料デブリ取り出し方針を検討する上で、有効な手法である。2015年に実施した 1~3 号機のPCV 内部調査、RPV 内部調査の検討状況を示す。

(1) 1 号機PCV 内部調査

  1. 目的:「PCV 内の1 階グレーチング上」の情報取得
  2. 方法:2015 年4 月にPCV 貫通部(X-100B ペネ)より調査装置を投入し、形状変形ロボットを用いたペデスタル外側調査(B1 調査)を実施した。
  3. 得られた情報:
    1. 既設設備(PLR ポンプ、 PCV 内壁面、給排気ユニット(HVH)など)の大きな損傷は確認されなかった。(燃料デブリは見られなかった。)
    2. 線量率は10 Sv/h 程度である。
    3. PLR 配管遮へい体が落下していることを確認した。
    4. D/W 底部へのアクセスルートが確認されたが、D/W 底部には堆積物が広く分布している。

  4. 考察:PLR 配管遮へい体(鉛毛マット)が落下していることから、1 階グレーチング部では鉛の融点328℃を超える温度になった可能性があることが推定できる。
  5. 課題:左回りの調査時にPLR ポンプと空調ユニット間の場所でグレーチングの隙間に調査ロボットのクローラーがはまり込みスタックが生じたことから、ロボットのクローラー部を確認しながらの前進後退を行うべきである。また、B1 調査後に温度計を設置した際に滞留水中に堆積物の舞い上がりによる視界不良が生じた。このため、PCV 内ペデスタル外側の調査(B2 調査)は、2016 年度に延期した。

(2) 2 号機PCV 内部調査

  1. 目的:内部調査ロボットを用いてプラットフォーム上の落下物、損傷の有無の確認及びPCV底部付近へのアクセスルートの状態を確認する。
  2. 方法: X-6 ペネを通しての内部調査ロボットによる調査を計画
  3. 得られた情報:
    1. PCV 内ペデスタル内側調査(A2 調査)を計画していたが、CRD ハッチ(X-6 ペネ)周辺に溶出物が確認され、近傍の線量率が想定を大幅に超えていた。

  4. 課題:X-6 ペネ周辺の線量低減対策が必要となったため、調査の実施を2016 年度に延期した。また、X-6 ペネは事象進展時の温度履歴を低く想定し、X-6 ペネからの溶出を想定していなかったことから、周辺の類似箇所を含め、今後PCV 補修対象範囲の再検討が必要である。なお、今回X-6 ペネ周りの現場において除染に複数の手法を試みているが、予想外に時間を要している。

(3) 3 号機PCV 内部調査

  1. 目的: PCV 内の冷却状態の確認及び今後の調査方法の検討に資する情報の取得
  2. 方法:2015 年10 月にPCV 貫通部(X-53 ペネ)より調査装置(カメラ、温度計、線量計)を挿入し、線量率測定、CCD カメラによるPCV 内部調査、滞留水採取を実施した。
  3. 得られた情報:
    1. CRD レール、1 階グレーチング上に堆積物が確認された。(PCV 内水中の透明度は良好であった。)
    2. PCV 内の水位は、OP:約11,800mm であり、推定値とおおむね一致していた。
    3. PCV 内気相部の線量は、最大で約1Sv/h であった。

  4. 考察:PCV 内部の放射線量が1~3 号機の中で最も低く、滞留水位が高いことによる遮へいの影響と考えられる。
  5. 課題:滞留水位が高いことから、PCV 内部調査においては、水位調整あるいは防水性を有する機器を用いる必要がある。

(4) RPV 内部調査

燃料デブリ取り出しに先立ち、RPV 内の燃料デブリや構造物の状況、環境状況を直接確認することは、取り出し作業を合理的に進めるために大変有効である。RPV 内部調査の方法として、これまでの検討において、ノズルに繋がる配管からRPV 内部にアクセスして調査することを検討した結果、適切な位置まで到達し、調査を行う方法は技術難度が高いと判断している。そこで、オペレーションフロア上からウェルシールドプラグ、PCV 上部に開口を設け、RPV 内部にアクセスし、内部調査を行う方法を開発対象に選び、実現性を確認するための開発を実施中である。主要な技術課題として、PCV 上部に開口を設けることに関し、内部からの放射性物質の放出を抑制のためのシール技術の可能性を要素試験で確認した。また、オペレーションフロアレベルからアクセスして炉心位置まで、複雑な内部構造物を貫通してアクセス孔を開ける技術について要素試験を行い、実現の可能性を確認した。さらに、現場でのRPV 内部調査で、必要となるシステムの概念を検討し、調査に係るシステムとして、放射性物質放出防止対策をはじめとして、相当の準備が必要であることを確認した。

今後の課題として、穴開け加工時や調査時のシステム全体に対する要求条件を整理し、具体的な検討を通して実現性の確認を行うと共に、適用する内部調査のための技術についても具体的な検討を進める。今後、RPV 内部調査として合理的な計画改善や、現場状況を考えた各号機での実施時期の具体的検討を進めると共に、システムの規模が大きくなる可能性があることから、技術的な実現性検討と合せ、調査ニーズに関し、調査項目と重要度の検討を深め、調査実施に伴うリスクについても考慮し費用対効果の観点からの判断が必要である。これらを計画的に行い、適切な時期に判断をしながら進めていくことが重要である。

なお、開発を進めるに当たって、他の技術開発内容や国内外の技術情報の調査を継続し、合理的な方法を柔軟に取り入れていくことが望ましい。

ミュオン検知

ミュオン検知技術を活用した燃料デブリ分布の測定について以下にまとめる。

(1) 1 号機

1 号機については、透過法のミュオン検知による燃料デブリ分布測定を2015 年2 月から5 月までと5 月から9 月までの2 回実施した。これらの測定結果から、元々の炉心位置には透過法のミュオン検知の識別能力である1 m を超える大きさの燃料も水もないと判断される。

(2) 2 号機、3 号機

2 号機については、原子核乾板による透過法のミュオン検知による燃料デブリ分布測定が実施され、炉心位置には大きな高密度物質(燃料)が無いものと想定されている。

また、透過法による炉心部及び炉底部の測定を2016 年3 月から開始し、3 ヵ月以上のデータ測定を行った後に評価を行う予定である。

3 号機についても測定計画を検討することが必要である。

参考文献