APSR(軸方向出力調整棒)挿入試験

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 TMI-2炉には、本来、61体の制御棒スパイダー(SSCR: Shim Safety Control Rod)が装荷された集合体(制御棒集合体)と8体の軸方向出力平坦化棒(APSR: Axial Power-Shaping Rod)スパイダーが装荷された集合体(APSR集合体)が装荷されていた。APSR集合体は、炉心の中間領域に円環状に配置されていた。事故時には、制御棒は全挿入されていたが、APSRは25%引き抜き状態にあった(全長の75%が挿入された状態)。初期の炉内状況推定では[1]、燃料集合体の損傷は比較的軽微であると推定され、燃料集合体上部の端栓や上部プレナム構造物内の上部格子の損傷状態の確認が重視された。そこで、圧力容器の上部から、小型CCTVカメラを挿入して、上部プレナム構造物内や燃料集合体の上部の状態を調査する目的で、Quick Look調査が計画された[2]。Quick Look調査、および、圧力容器ヘッドの取り外しでは、その準備作業の一環として、制御棒やAPSRのリードスクリューとスパイダーとの接続を外し、スパイダーは炉心部に崩落させ、リードスクリューは引き抜く、あるいは中間位置に保持する必要があった[2,3]。まず、電気系統の信号を利用して、APSR8本とSSCRのうち3本の残留状態の確認作業が行われた[4]。APSRは、全長に対し、約26~27%が引き抜かれた状態であることが確認された。SSCRについては、炉心に全挿入されていることが確認された。上部プレナム領域の熱電対は、1本以外は機能を有していることが確認された。

 次に、APSRを炉心内に強制的に挿入する作業を行い、その際の障害や音波シグナルを計測して、炉心上部の損傷状態に係るデータを収集する計画が立案された(APSR挿入試験[5])。音波シグナル計測のために、リードスクリューの駆動機構に加速度計が取り付けられた。得られたデータは、B&W社(Babcock & Wilcox Company)とSAI社(Science Applications, Incorporated)でそれぞれ解析が行われた。APSR挿入試験の結果は、事故後のインコアモニター(熱電対、中性子計測)の信号やQuick Look[2]で得られた画像データとあわせて、事故炉上部の状態の総合的な評価に用いられた。

参考:Quick Look計画

参考:圧力容器ヘッド取り外し計画

参考:上部プレナム構造物取り外し計画

参考:デブリ取り出し工法の変遷

APSR挿入試験の準備

 図1に、APSRの装荷位置を示す[1]。8本のAPSRが円環状に配置されていた。このうち、64,68,69の3本がほとんど挿入できなかった(後述)。また、つづいて実施されたQuick Look[2]では、炉心中央のH8集合体、炉心外周のB8集合体、中間部のE9集合体の位置でそれぞれCCTVが挿入された[2]。最初に炉心中央のH8にCCTVが挿入され、炉心上部に空洞があることが確認された。次に炉心外周のB8から挿入されたが、燃料集合体が上の方まで残留し、内部が十分に調査できなかった。そこで、調査位置を炉心中間のE9に変更している[2]。図2に、APSRスパイダーの構造を示す。16本のAPSRが取り付けられ、Ag-In-Cdの中性子吸収材がSS被覆管内に装荷されている。形状は制御棒スパイダーとほぼ同じで、制御棒の全長が異なっている。図3に、加速度計の取り付け位置とAPSRの配置図を示す。圧力容器上部にあった作業用プラットフォームから、APSRが装荷され、その上端に加速度計が取り付けられた。事故時には、炉心から25%引き抜かれた位置で維持されていた[1]。図4に、APSRの上部駆動機構の構造を示す[1]。電気駆動モーターによる回転を、APSR軸方向への高精度な上下移動に変換して伝える構造となっている。圧力容器ヘッド取り出し時に切断する必要があるリードスクリューとスパイダーとの接続位置を確認することができる。

 音波聴診のモックアップ試験が、TMI-1炉を用いて、Diamond Power Speciality Companyによって実施された[3]。モックアップ試験では、以下の各種音波信号の確認が行われた。#このような音波信号による聴診検査は、一般の商用炉でもよく用いられていると記述されている[1]

  • Latch音:ローラーナットが締めこまれてリードスクリューと固定される音
  • Unlatch音:逆に、ローラーナットが外れる音
  • Jog音:リードスクリューが降下する際に回転が縦軸方向の移動に変換される音
  • Pole slip音:リードスクリューの降下が妨害された際に、4回負荷をかけてから、Latchを2段階戻し、再度負荷をかける音

 次に、TMI-2炉の現場で、発生音の確認が行われた。TMI-2炉では、駆動モーターが水没していたのに対し、TMI-1では駆動部に潤滑油が注入される構造が維持されていたため、基本的な音は必ずしも一致していなかった。

参考:Quick Look計画

挿入試験の結果

 8本のAPSRのうち、2本はほぼ全挿入(100%近く挿入)、2本は約5%引き抜き位置まで挿入(95%挿入)、1本は19%引き抜き位置まで挿入(80%挿入)、残り3本はほとんど挿入できなかった。表1に、挿入深さを示す。全挿入できたAPSRは、事故により上部格子より下の部位がほとんど失われており、挿入時の障害にならなかったと推定された。一方、挿入できなかったAPSRは、上部格子付近あるいは上部プレナムの案内管内に何らかの障害物(溶融凝固物、蒸発凝縮物など)があるか、高温に曝されて構造が変形したと推定された。

表1 APSRの挿入データ [1]
APSR番号[図1参照] 挿入前の引き抜き位置(%) 挿入試験後の位置(%) 挿入された長さ(cm)
62 26 5 73
63 25 19 20
64 25 25 0.8
65 25 0 91
66 25 4 76
67 26 1 86
68 25 23 8.9
69 26 26 0.6

インコアモニターのデータ

 APSR挿入試験と並行して、炉心に装荷されていたインコアモニター(熱電対、中性子検出器)の信号が測定された。図5に、インコアモニターの配置図を示す。熱電対は、52個の燃料集合体の上部に取り付けられていた。中性子計測器は、52体の燃料集合体の軸方向に7つのレベルで取り付けられていた。熱電対については、生データとして電気抵抗値が測定され、その信号値から炉心中央部で損傷が激しいと推定された。中性子計測では、炉心外周部ではレベル2より上の計測器が大きく破損したと推定された。また、炉心中央ではすべてのレベルで計測器が大きく破損したと推定された。

試験結果のまとめ

 APSR挿入試験と、インコアモニターの信号、Quick Look[2]でのCCTVカメラ画像を比較検討することで、炉心上部の様子が予備的に評価されている。図6に、評価結果をまとめて示す[1]。いずれの調査結果からも、炉心中央で燃料集合体の損傷・崩落が進んでいること、炉心外周部では燃料集合体が残留していることが示された。

 また、APSR挿入試験により、APSRをできるだけ下に降ろすことに成功し、リードスクリューの取り外しに向けた準備が整ったと記述されている。また、事故直後にカメラなどの計測プローブが圧力容器内に挿入できない中で、音波信号で、炉内破損状態に関する知見を得ることができたと記されている。

参考文献

[1] G.W. Croucher, Three Mile Island UNIT-2 Core Status Summary: A Basis for Tool Development for Reactor Dissassembly and Defueling, GEND-007, 1981.

[2] Quick look inspection: Report on the insertion of a camera into the TMI-2 reactor vessel through a leadscrew opening, GEND-030, vol.1, 1983.

[3] P.R. Bengel, M.D. Smith, G.A. Estabrook, TMI-2 Reactor Vessel Head Removal, GEND-044, 1985.

[4] F.T. Soberano ei al., Static in-situ Test of the Axial Power Shaping Rod and Shim Safety Control Rod Mechanisms, GEND-INF-026, 1982.

[5] R.W. Garner, D.E. Owen, M.R. Martin, An assessment of the TMI-2 Axial Power-shaping rod dynamic test results, GEND-INF-038, 1983.

[6] J.A. Gannon, Development of In Situ Test Procedures for TMI-2 Axial Power Shaping Rod Drive Mechanism, GEND-INF-028, 1982.